
科学者たちは全ゲノム配列解析を通じて、現代日本人の祖先は従来考えられていた2つの民族ではなく、3つの古代集団から構成されていることを発見しました。この発見は、理化学研究所統合医科学研究センターが実施した大規模研究から得られたもので、日本全国から3,200人以上の全ゲノムデータを解析しました。
長年、学者たちは日本人の祖先は主に2つの系統、すなわち先住の縄文狩猟採集民と、後に東アジアから移住してきた稲作農耕民に分かれると考えていました。しかし、新たな研究では、北東アジアから来た「蝦夷人」も重要な構成要素であったことが指摘されており、日本国家の形成過程はより複雑で多様なものであったことを示しています。研究により、日本人の遺伝的多様性には明らかな地域差があることが分かっています。沖縄県民は縄文系祖先の割合が最も高く(28.5%)、西日本の人々の遺伝子は漢民族に近いことが分かっています。これは東アジアからの移民の歴史的影響と関連している可能性があります。蝦夷系の祖先は、東北地方に最も多く見られます。
研究チームは、従来の遺伝子チップ法の3,000倍のデータ量を誇る全ゲノムシークエンシング技術を用いて、「日本全ゲノム・エクソーム配列事典」(JEWEL)データベースを構築しました。このデータベースは、遺伝情報と臨床データを統合し、疾患との関連性を探るものです。解析の結果、現代日本人はネアンデルタール人とデニソワ人由来の44個の古代遺伝子断片を保有していることが明らかになりました。これらの遺伝子断片の一部は、2型糖尿病や冠動脈疾患などの疾患と関連しています。さらに、特定の遺伝子変異は、高血圧や難聴などの健康問題と関連している可能性があります。
この研究は、日本人の起源に関する認識を覆すだけでなく、個別化医療の将来的な方向性を示すものでもあります。現在、大規模なゲノム研究は依然として主にヨーロッパ系の集団に焦点を当てていますが、科学者はゲノム研究をアジア系の集団に拡大することが将来の医学の発展にとって非常に重要であると強調しています。