
欧州原子核研究機構(CERN)の物理学者たちは、大型ハドロン衝突型加速器(LHC)を用いて鉛を金に変える研究を行っています。このプロセスはわずか数マイクロ秒しかかからず、非常に高額です。この成果は、17世紀の錬金術師たちの夢が現代科学によって実現されたことを示しています。
CERNのLHCで行われたこの実験では、ほぼ光速で移動する鉛イオンビームを衝突させました。イオンが正面衝突することなく互いのそばを通り過ぎると、強力な電磁場がエネルギーパルスを引き起こし、鉛の原子核は陽子を3つ失って金の原子核に変化します。鉛と金の陽子数は異なるため(鉛は82個、金は79個)、この変化は従来の化学的手法では実現できません。
研究チームは、膨大な衝突データから金の原子核生成のシグナルを抽出しました。 2015年から2018年までのデータによると、衝突によって合計860億個の金原子核が生成されましたが、その総質量はわずか1兆分の1グラム程度でした。これらの金原子核は非常に不安定で、通常は1マイクロ秒以内に崩壊するか、実験装置に衝突します。
以前、CERNの別の加速器であるSPSが2002年から2004年にかけて同様の現象を観測していましたが、LHCの実験エネルギーはより高く、金原子核の生成量が大幅に向上し、観測結果もより正確でした。技術的には可能ですが、CERNは金を大量生産する計画はありません。研究チームは、この実験の核心的な意義は、光子と原子核の相互作用をより深く理解し、LHCの粒子ビーム性能を最適化し、将来の高エネルギー物理学実験を支援することにあると指摘しました。